【感想・書評】物理学はいかに創られたか(上)(下)(岩波新書、アインシュタイン)

【感想・書評】物理学はいかに創られたか(上)(下)(岩波新書アインシュタイン

 

 

 

『物理学はいかに創られたか』の著者の実績と信頼性

 かの有名なアインシュタインさんとその弟子のインフェルトさんの著作です。アインシュタインさんは、言うまでもなく、ノーベル賞受賞にとどまらず、相対性理論量子力学などの発展に大きく貢献しました。
 『物理学はいかに創られたか』の実績と信頼性は絶大といえます。

 

どんな人におすすめ?

・高校の物理の教科書を理解している人
相対性理論の入門書を理解している人

 

『物理学はいかに創られたか』の感想、書評

 かの有名なアインシュタインさんとその弟子のインフェルトさんの著作です。
 ガリレイニュートンから、相対性理論量子論まで、数式を使わずに、物理学の歴史的な発展をわかりやすく語っています。
 ただ、高校の物理の教科書くらいは理解しておいたほうがいいと思います。相対性理論の部分は、高校物理では扱わないので、初心者向けのわかりやすい入門書などを先に読んでおくといいかもしれません。

 アインシュタインは、物理学の発展が科学的方法の進歩によって大きく変化したことを説明しています。彼は、古代ギリシャの哲学者から、近代科学の父とされるアイザック・ニュートンまでの歴史をたどり、物理学の発展に貢献した重要な科学者たちを紹介しています。

 また、アインシュタインは、自分の相対性理論量子力学についても説明しています。これらの理論は、当時の物理学に大きな影響を与え、今日でも物理学の基礎理論として使用されています。

 『物理学はいかに創られたか』は、物理学に関心を持つ人や、物理学について学びたい人にとって、非常に興味深い書籍です。アインシュタインの卓越した才能と知識を持つ著者たちによって書かれたこの書籍は、物理学の歴史的な進化を深く理解するための良質の教材だと思います。

 本書には、以下のような特徴があります。

・歴史的な文脈に沿ったアプローチ
本書では、物理学の歴史的な発展を扱っており、古代ギリシャの哲学者から現代の量子力学に至るまで、物理学の発展を時系列で追跡しています。このようなアプローチにより、物理学がどのように進化してきたかが明確になり、物理学の基礎理論を深く理解することができると思います。

アインシュタイン自身による理論の解説
アインシュタインは、本書で自分自身の相対性理論量子力学について説明しています。これらの理論は、当時の物理学に大きな影響を与え、今日でも物理学の基礎理論として使用されています。アインシュタインが自らの理論について説明することによって、読者は物理学の最も難解な理論を理解するための手がかりを得ることができると思います。

・読みやすい文章
本書は、アインシュタインや共著者であるインフェルトの文章が非常に読みやすく、難解な物理学の理論や数学的な導出も、わかりやすい言葉で説明されています。これにより、初心者から専門家まで、幅広い読者層が物理学の歴史と理論を深く理解することができると思います。

 面白いなと思ったのは、上巻の第1章が『力学的自然観の勃興』で第2章が『力学的自然観の凋落』と題されていることです。ガリレイニュートンによって、力学的に自然を観るようになったものの、それを電気や光の現象にそのまま適用するのは困難である。たとえば、運動している電気は磁針に作用するが、その力は距離のみによらないで、荷電体の速度にも関係する。また、その力は引力でも斥力でもなく、磁針と荷電体とを結ぶ線に垂直に作用する、などです。そして、第2章『力学的自然観の凋落』を「力学的自然観を見限るより他はないわけです。」と結んでいます。
 自然科学の歴史において、私たちの自然観は何度も変遷してきました。特に興味深いのは、その変遷がしばしば先駆者の思想に影響を受けていることです。その一例として、力学的自然観の「勃興」から「凋落」への移行が挙げられます。
 力学的自然観は、ニュートンの法則などに代表される力学を基に、自然現象を説明しようとする考え方です。これは、自然が決定論的で予測可能な機械のように働くという観念に基づいています。しかし、この観念はその後、電気や光の現象といった新たな科学的発見を説明するのに不十分であることが明らかになりました。
 例えば、電気が運動するとき、その作用は距離だけでなく荷電体の速度にも関連します。また、この力は単純な引力や斥力とは異なり、磁針と荷電体を結ぶ線に対して垂直に作用します。これらの現象は、従来の力学的自然観では説明が難しいものでした。
 これらの難題を解決するために、科学者たちは力学的自然観を超えた新たな視点を模索することを余儀なくされました。このようにして力学的自然観は「凋落」していきます。その結果、「力学的自然観を見限るより他はないわけです。」との結論に至りました。
 この過程は、科学的知識が絶えず発展し、更新されていく様子を示しています。そのため、常に新たな視点を持ち、自己の理解を柔軟に見直すことの重要性を、私たちは学ぶべきです。また、自然現象を理解するためには一つの視点や理論だけでは不十分であり、多様な知識と視野が求められるということも忘れてはならないでしょう。

 第3章は『場・相対性』と題されています。「場」というものを考えるのですね。「磁場」は地球の磁場、などと日常でも聞くことがあるでしょうし、「電場」は高校物理で習います。

 第4章、最終章は『量子』です。
量子論では、すべての物質は波(物質波)であり、物質波は確率の波です。
『物理学はいかに創られたか』の最後は「性質ではなく確率が記述され、体系の将来を明らかにする法則ではなく、確率の時間による変化を支配し、従って、個々のものの大きな集合に関する法則が立てられます。」と結んでいます。

 アインシュタインさんは「神はサイコロを振らない」と、量子論のこの「確率」の部分を批判していたそうですが、どうなのでしょう。

 

『物理学はいかに創られたか』の目次

1.力学的自然観の勃興
 大きな謎物語
 最初の手がかり
 ベクトル
 運動の謎
 残る一つの手がかり
 熱は物質であるか
 スウィッチバック
 換算の割合
 哲学的背景
 物体の運動学的理論

2.力学的自然観の凋落
 二つの電気流体
 磁気流体
 最初の重大困難
 光の速さ
 実体としての光
 色の謎
 波動とは何か
 光の波動説
 光は縦波か横波か
 エーテルと力学的自然観

3.場・相対性
 表示方法としての場
 場の理論の二つの柱石
 場の実在性
 場とエーテル
 力学的足場
 エーテルと運動
 時間、距離、相対性
 相対性と力学
 時空連続体
 一般相対性
 昇降機の内と外
 幾何学と実験
 一般相対性とその検証
 場と物体

4.量子
 連続、不連続
 物質と電気との素量子
 光の量子
 光のスペクトル
 物質の波
 確率波
 物理学と実在

 

『物理学はいかに創られたか』の出版社の実績と信頼性

 『物理学はいかに創られたか』の出版社は岩波書店です。国内外の古典的著作を収めた「岩波文庫」、書き下ろし作品による一般啓蒙書を収めた「岩波新書」などで有名です。『広辞苑』も岩波書店が出版しています。
 同じくノーベル物理学賞を受賞されたファインマン先生の『ご冗談でしょうファインマンさん』『ファインマン物理学』も岩波書店から出版されています。
 出版社の岩波書店の実績と信頼性は抜群と言えます。