【感想】物理学とは何だろうか(上)(下)(岩波新書、朝永振一郎):物理学への人類の姿勢の変遷

【感想】物理学とは何だろうか(上)(下)(岩波新書朝永振一郎):物理学への人類の姿勢の変遷

 

 

 

『物理学とは何だろうか』はどんな人におすすめ?

・上巻は高校物理の教科書を理解した人
・下巻は大学初級の物理学を理解した人

 

『物理学とは何だろうか』の著者の実績と信頼性

 『物理学とは何だろうか』の著者は朝永振一郎先生です。1965年に日本人としては2人目にノーベル賞を受賞された物理学者です。ちなみに、この物理学賞の受賞は『ご冗談でしょう、ファインマンさん』『ファインマン物理学』で有名なファインマン先生と同時受賞でした。
 ノーベル物理学賞受賞者ということで、著者の実績、信頼性は絶大です。

 

『物理学とは何だろうか』の感想

 『物理学とは何だろうか』の上巻は、ほぼ数式を使わずに、ケプラーガリレオニュートンについて、少し数式を使って、火力機関を中心に熱力学について語っています。
 ケプラーガリレオニュートンの部分は、「占星術」「錬金術」といった、近代科学以前のものとの連続性が感じられます。ガリレオが異端判決を受けたのは有名ですが、ケプラーのお母さんは、魔女の疑いで告発されてしまったそうです。
 下巻に出てくる話ですが、この頃は、科学がむしろ、薄気味の悪い、あやしいものとして見られていた、とのことです。現在は、科学が信頼性の高いものと考えられていること比べると、面白いですね。まあ、いつの時代でも、新しいものは、薄気味の悪い、あやしいものなのかもしれません。 
 上巻は、高校物理は理解していたほうがいいと思いますが、難しいと思ったら少し飛ばして読めば、国語力でイメージくらいはつかめると思います。

 『物理学とは何だろうか』の下巻は、まず、熱の分子運動論について語られます。
 この部分は、数式こそあまり出てきませんが、大学入試レベルの物理を理解していても、かなり難しいと思います。
 熱の最後の章は「熱の分子運動論完成の苦しみ」と題されており、難しいものの、なにか人間臭さを感じますね。
 そして、この「熱の分子運動論完成の苦しみ」の最後の部分は、朝永振一郎先生が亡くなる8ヶ月ほど前に、病室で口述されたもののようです。
 下巻の終わりには「科学と文明」と題した公演が収録されています。この部分は読みやすいと思います。

 さて「物理学とは何だろうか」。
 朝永振一郎先生は
「物質が原子からなる、というかつては哲学上の学説であったものが物理学に取り入れられ、(中略)「観察された事実に拠りどころを求める」という物理学の性格も、「仮説を導入し、それの当否を実験によって検証する」という、より冒険的な要素を取り入れることになりました。さらに、20世紀に入ると、巨視的物理、微視的物理、という言葉で表現されるような人間側の自然に対する見かたが物理学の普遍性とどう関係するか、といったような問があらたに「物理学とは何だろうか」につけ加わるのです。」
としています。
 高校倫理で習うように、古代ギリシアから、物質が原子からなる、という考え方はありました。しかし、それは科学ではなく、哲学だった。それ以来、20世紀のマクロ、ミクロという見方に至るまでの、人類の物理学への姿勢の変遷が、この本のテーマの1つなのだと思います。

 

『物理学とは何だろうか』の目次

第1章
1.ケプラーの模索と発見
2.ガリレオの実験と論証
3.ニュートンの打ち立てた記念碑
4.科学と教会
5.錬金術から化学へ

第2章
1.技術の進歩と物理学
2.ワットの発明
3.火の動力についての考察
4.熱の科学の確立

第3章
1.近代原子論の成立
2.熱と分子
3.熱の分子運動論完成の苦しみ

科学と文明

 

『物理学とは何だろうか』の出版社の実績と信頼性

 『物理学とは何だろうか』の出版社は岩波書店です。国内外の古典的著作を収めた「岩波文庫」、書き下ろし作品による一般啓蒙書を収めた「岩波新書」などで有名です。『広辞苑』も岩波書店が出版しています。
 朝永振一郎先生と同時にノーベル物理学賞を受賞されたファインマン先生の『ご冗談でしょうファインマンさん』『ファインマン物理学』も岩波書店から出版されています。
 出版社の岩波書店の実績と信頼性は抜群と言えます。