【感想】クマのプーさん(講談社ルビー・ブックス):意外に哲学的。大学受験英語に役立つ?

【感想】クマのプーさん講談社ルビー・ブックス):意外に哲学的。大学受験英語に役立つ?

 

 

 

感想

 クマのプーさんはディズニーアニメのイメージが強いかもしれません。しかし、原作の小説は、児童文学に分類されるのでしょうが、たとえば、ある団体が選んだ「20世紀最高の英語小説ベスト100」で22位にランクインしています。
 小学校高学年あたりが読んでも面白いのだと思いますが、もっと面白さを理解するには、もう少し大人になる必要がある気がします。ちょっと哲学的だったりもすると思います。
 たとえば、「ものごとは、考えようによっては、すべて違って見える」というプーさんの言葉は、物事の捉え方や価値観についての深い洞察を表していると思います。それぞれの状況に対して柔軟な視点を持ち、違った角度から物事を捉えることで、新たな理解が得られることを示唆しています。

 本作は、主人公のプーさんを始めとする動物たちの愛らしい物語であり、登場するキャラクターたちが抱える心の葛藤や友情、そして人間の世界にも通じる普遍的なテーマを描いています。主人公のプーさんと彼の友達たちが住む100エーカーの森を舞台に、様々な冒険や出来事がくり広げられます。プーさんはどこか抜けたところがありながらも愛らしい性格で、彼の友達であるピグレット、ティガー、イーヨー、オウル、カンガ、ルー、そしてクリストファー・ロビンと共に、読者を魅了する物語が展開されます。

 この物語の最大の魅力は、何と言ってもキャラクターたちの心温まる友情だと思います。プーさんたちが、それぞれの個性を尊重し合い、困難な状況にも協力して立ち向かっていく姿が描かれている。また、彼らは普段の生活でさえ、相手の気持ちを考えて行動することが描かれており、読者にも友情や思いやりの大切さを教えてくれると思います。

 登場するキャラクターたちも、それぞれに独特の魅力があります。プーさんは愛らしい見た目と裏腹に、時折ふとした瞬間に哲学的な発言をすることがあります。このギャップが、彼をより一層魅力的なキャラクターへと昇華させていると思います。ピグレットは小さな体でいつも不安に感じながらも、プーさんと共に冒険に出る勇気を持ち続けています。イーヨーは悲観的でどこかユーモラスな性格で、読者に笑いを提供する一方で、彼の悲観主義が他のキャラクターとの対比を際立たせる役割も果たしていると思います。ティガーは元気で好奇心旺盛な性格で、物語に活気を与える存在だと思います。オウルは知識豊富ですが、時に長々と話す癖があり、そのコミカルなキャラクターが物語にアクセントを添えていると思います。カンガとルーは親子であり、彼らの関係性は愛情深いものであるが、彼らもまた森の仲間たちと助け合い、友情を育んでいきます。

 物語の中で繰り広げられる冒険や出来事は、一見すると子供向けのシンプルなものに思えるかもしれません。しかし、それらのエピソードは実は深い意味が込められており、大人になった読者にも多くの教訓を与えると思います。例えば、プーさんが考え抜く「くもの日」の話は、物事の考え方や価値観について、読者に考えさせられる。また、プーさんが「考える力」を持っていることを自覚し、それを活用することで困難を乗り越えるエピソードも、自分自身の力を信じることの大切さを伝えている。

 本作には、子供たちだけでなく大人にも共感できる普遍的なテーマが詰まっています。友情や愛情、自己受容、協力、勇気、失敗からの学びなど、人生において重要な要素が織り込まれており、それらは言葉や文化の壁を越えて多くの人々に共感を与えていると思います。

 また、本作にはユーモアが随所に散りばめられており、その独特のセンスが読者を魅了すると思います。プーさんの言動や他のキャラクターたちの掛け合いが、読者に笑いを提供するだけでなく、物語のテンポを生み出していると思います。このユーモアのおかげで、『くまのプーさん』は単なる子供向けの物語ではなく、大人も楽しむことができる作品となっていると思います。

 第1話はプーさんが木の上の蜂の巣から蜂を欺いてハチミツを取るために、自分は泥だらけになって、青い風船を持って浮かび、青空と黒い雲を装う話です。プーさんはクリストファー・ロビンに、こうもり傘を持って、雨が降っているかのように装うことを頼みます。クリストファー・ロビンは”Silly old Bear!(ばっかなクマのやつ)"と内心笑います。

 その後もプーさんは、ちょっと脳みそが足りないキャラとして描かれます。

 第9話は大雨で水に囲まれたコブタをプーさんが救助する話です。湖と化した森の中をどうやって救助しに行くか。プーさんはクリストファー・ロビンに"We might go in your umbrella,"と言います。クリストファー・ロビンは、プーさんの知恵に感嘆し、このこうもり傘のボートを"The Brain of Pooh"と命名します。
 そして、第10話、最終話は、クリストファー・ロビンがコブタを救助したプーさんの功を労うために、パーティーを開きます。
 第1話のこうもり傘は伏線だったのですね。

 英語版については、原作の難しい表現を易しく書き直したリライト版などもありますが、大学受験レベルのまずまずの英語力があれば、原作で、たまに出てくる難しめの表現に日本語の注をつけたものくらいをスムーズに読めると思います。
 ただし、小説独特の難しさもあるので、先に日本語訳を読んだほうがいいかもしれません。
 原作は、英文のすぐ下にルビがついたものがオススメです。ルビがついているから「ルビー・ブックス」なのでしょうか(笑)。原作の音声CDも買うことができます。
大学受験塾チーム番町の塾長は音声CDも持っています(笑)。

 CD3枚分なので、原作はおそらく20,000~30,000語程度なのではないでしょうか。

 大学受験向けには、20,000~30,000語程度の易しめの英文を用意できるので、多読の素材としてはいいかもしれないと言えます。一方、小説独特の文体や、単語が、ニュース、評論メインの大学受験英語との相性が良くないので、強くはおすすめできない、といったところです。東大のように、小説が出題される大学ならば、小説独特の文体に慣れるのにいいのかもしれませんが、東大の過去問の小説の部分をひたすら復習する、といったほうが、効果は高いかもしれません。
 また、くまのプーさんが好きな人なら、問題なく、多読の素材として使えば、英語力の強化に役立つと思います。