【感想・書評】物理法則はいかにして発見されたか(岩波現代文庫、ファインマン)

【感想・書評】物理法則はいかにして発見されたか(岩波現代文庫ファインマン

 

 

『物理法則はいかにして発見されたか』の感想、書評

 ファインマン先生(1918-1988)はノーベル賞も受賞された物理学者です。受賞は朝永振一郎先生と同時ですね。カリフォルニア工科大学時代の講義内容をもとにした物理学の教科書『ファインマン物理学』は、世界中で高い評価を受けたそうです。逸話集『ご冗談でしょう、ファインマンさん』も有名です。

 『物理法則はいかにして発見されたか』はファインマン先生の講演集です。
 第1部のコーネル大学での講演の原題は『The Character of Physical Law』です。
 数式はたまに出てくる程度です。
 『物理法則はいかにして発見されたか』の第1部の前半は、高校物理の教科書を理解していれば、かなり理解しやすいと思います。
 後半も、東大にそれなりの人数が入るような高校なら「エントロピー」の話はするでしょうし、高校物理の教科書でちょっと電子の波動性を扱うので、なんとかなると思います。
 「対称性」という話はあまり高校では聞きませんが、光学異性体の偏光性の話などが出てきます。有機化学で習いますね。天然の砂糖大根から作った砂糖は光を右に回しますが、人工の砂糖は光を回しません。細菌に人工の砂糖を与えると、光を右に回す砂糖のみを食べ、左に回す砂糖を食べないのだそうです。
 また、中性子が陽子と電子と反ニュートリノに崩壊するとき(高校の物理や化学で習うβ崩壊)、電子のスピンの向きは、電子の後ろから見て左回りに決まっているのだそうです。
 面白いですね。

 『物理法則はいかにして発見されたか』の第2部の「量子電磁力学に対する時空全局的観点の発展」はノーベル賞受賞講演です。
 普通の東大合格レベルの高校生くらいでは理解は難しいと思います。なんとなくファインマン先生の試行錯誤の雰囲気をつかむといいのではないでしょうか。

 本書は、科学の本質と物理学の基本原理について、ファインマン先生のの鋭い洞察力と風変わりなユーモアを交えて論じた本だと思います。科学について興味を持っている人や、物理学の専門家である人々にとって、非常に興味深く、知的好奇心を刺激するものとなっていると思います。

 ファインマン先生は、この本で、物理学が探求する対象は自然界の法則であることを強調しています。そして、自然界の法則を発見するために必要なのは、独自の思考力と直感力であると述べています。彼はまた、物理学者たちが常に自分たちの発見を疑うことが重要であると主張しています。

 『物理法則はいかにして発見されたか』は、非常に論理的で、説明が明瞭であり、ファインマン先生のユニークなスタイルとユーモアが満載です。彼は、物理学に関する最も基本的な原理を非常に簡潔に説明し、それが物理学がなぜ自然界の法則を発見するのに適しているかを示しています。

 私自身、本書は、物理学について非常に深く考えるきっかけとなりました。ファインマン先生の熱意と、彼の自然界の法則に対する深い愛情が、本書を読む人々にインスパイアすることでしょう。全体として、この本は、科学に対する熱い情熱を持つ人々にとって、非常に読み応えのある書籍となっているとおもいます。

 

『物理法則はいかにして発見されたか』の目次

第1部 物理法則とは何か
コーネル大学における講演
1.重力の法則-物理法則の一例として
2.数学の物理学に対する関係
3.保存という名の大法則
4.物理法則のもつ対称性
5.過去と未来の区別
6.確率と不確定性-量子力学的の自然観
7.新しい法則を求めて

第2部 量子電磁力学に対する時空全局的観点の発展
ノーベル賞受賞講演