【感想・書評】高校数学でわかるマクスウェル方程式(講談社ブルーバックス)

【感想・書評】高校数学でわかるマクスウェル方程式講談社ブルーバックス

 

 

『高校数学でわかるマクスウェル方程式』はどんな人におすすめ?

・高校の物理の教科書の電磁気分野と数学Ⅲの微積分を理解し、マクスウェル方程式に興味がある人。
マクスウェル方程式のイメージがつかめない大学生。

 

『高校数学でわかるマクスウェル方程式』の感想・書評

 『ご冗談でしょう、ファインマンさん』などで有名なノーベル賞物理学者、ファインマン先生は、世界的に高評価を受けている教科書『ファインマン物理学』の電磁気学編の最初のほうで以下のように述べています。

「人類の歴史という長い眼から、たとえば今から1万年後の世界から眺めたら、19世紀の一番顕著な事件がマクスウェルによる電磁気法則の発見であったと判断されることはほとんど間違いない。アメリカの南北戦争も同じ頃のこの科学上の事件に比べたら一地方の取るに足らぬ事件になってしまうであろう。」

 そのような、世界市場の大事件である、マクスウェル方程式は、大学レベルの微積分で記述されます。それを、高校の理系数学の微積分程度で理解しようという、チャレンジングな本で、素晴らしい企画だと思いました。

 まず、『高校数学でわかるマクスウェル方程式』の第1部では平賀源内やベンジャミン・フランクリンから、電磁気の歴史が語られます。高校の物理の教科書では、

円形電流の中心の磁場
H=I/2r
ソレノイドの内部の磁場
H=nI

天下り的(数学や物理の分野において、問題を解く上で必要な数式や概念を、根拠を明示せずに導入するさま)に与えられますが、本書では、

直線電流の周囲の磁場(アンペールの法則)
H=I/2πr

から、微積分の考え方を使って導いています。進学校だと、授業でこのように習うかもしれません。

 『高校数学でわかるマクスウェル方程式』の第2部では、マクスウェル方程式を高校の数学Ⅲ程度の微分積分の考え方を使って、導いています。マクスウェル方程式は、大学の電磁気では、偏微分、rot、divなどの記号を用いて記述されていますが、本書では数学Ⅲ程度の微分積分の記号で記述しています。一部、∮(周回積分)という記号も出てきますが、まあ、読めばわかると思います。

 マクスウェル方程式も結局は、
第1式はガウスの法則
(Q[C]の帯電体から出る電気力線の総数は4πkQ本である)
第2式はファラデーの電磁誘導の法則
(V=-⊿Φ/⊿t)
第3式は磁石のN極とS極が必ずペアである
第4式はアンペールの法則
(H=I/2πr)
だということです。
 高校物理の電磁気で習うことは、ほぼ、マクスウェル方程式の基本的なところを微積分を使わないで習っている、ということなのですね。

 微積分に関しても、部分積分や置換積分は出てきません。それよりも、微分は瞬間の変化の割合、傾き。積分は微小な変化を足し合わせたもの。というようなイメージが大切だと思います。大学受験塾チーム番町のように、きちんと数学を教えている塾の生徒は、十分理解できると思います。

 『高校数学でわかるマクスウェル方程式』の第3部では、著者の方が、日本人の、議論、学会発表のあり方、言論、発想の自由、などについての意見を述べています。

 

『高校数学でわかるマクスウェル方程式』の目次

第1部 エレキの謎を探る旅
1.平賀源内の挑戦
2.クーロンの秘密兵器
3.ファラデーの登場
4.もう一人の天才、アンペール
5.最後の壁、電磁誘導

第2部 電磁気学の統合
1.マクスウェルの方程式
2.電子のベール 
3.無限のバトンリレー
4.エレクトロニクスへ

第3部 旅の終わりに